金子 敏明

教授

金子 敏明

研究課題:イオンと物質との相互作用の理論的研究
KEYWORDS:イオンビーム、エネルギー搊失、電子的阻止能、クラスターイオン、電子励起、誘電応答、重粒子線治療、応用分野: 粒子線物理、半導体工学、エネルギー関連分野、重粒子線による治療

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金子 敏明

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研究の背景・内容・目的

加速器で加速したイオンを物質に照射して、誘発される種々の現象を研究することは1930年代から始まった。1960年代には特に固体標的を意識した「イオンビームと固体との相互作用」の研究にチャネリング効果の発見が火をつけた。チャネリング効果とは、結晶軸方向に入射したイオンビームが非常によく透過する現象である。その後、イオンを照射すると固体を構成している原子や電子が放出される現象(スパッタリング、2次電子放出、2次イオン放出)、イオンが物質中の原子や電子をはじき飛ばすことによって失うエネルギー損失現象、物質を通過するイオンの電子数が変化する荷電変換現象(電子捕獲や電子損失)の諸問題も衝突理論の立場から説明できることがわかってきた。現在では、イオンビームは、半導体材料の製作におけるイオン注入、ラザフォード後方散乱法による固体の元素分析、非破壊検査、また特に最近では、高エネルギーの炭素イオン(重粒子イオン)ビームを用いたガン治療、などに利用されはじめている。さらに、ナノテクノロジーに関連して、C60などのクラスターイオンが加速できるようになった。日本では、原子力研究機構高崎量子応用研究所や筑波大学などで実験的研究が進んでいて、従来からの単一イオン照射とは異なる新たな現象が多く見つかっている。われわれは、これらを総称して「クラスター効果」と呼んでいる。このように、応用面での進歩が著しい「粒子線物理学」ではあるが、基礎的に未解決な問題が多く残されている。われわれは、粒子線物理学での諸問題、特に最近では、クラスターイオンを用いた照射効果を理論的に研究することが大きなテーマの1つになっている。この研究に関する成果は、1998年度から2007年度までの10年間にわたって、文部科学省の学術フロンティア推進事業によるところが大きかった。現在、原子力研究機構高崎量子応用研究所や筑波大学、奈良女子大学など実験研究機関との共同研究によって、平均電荷、エネルギー搊失、2次電子収率に関する研究を進めている。

また、われわれは、イオンビーム関係の大学院生の交流・教育の場として、フォーラム21「イオンビームを用いた物理とその応用」研究会を約10年前に発足させた。発足当初時は、岡山理大と奈良女子大学、京都大学くらいであった。それ以来、この研究会は毎年1回、幹事大学をきめて毎年開催している。最近では、2013年1月12日(土)に京都府立大学、2014年1月11日(土)に奈良女子大学で開催した。2015年1月10日(土)には大阪教育大学で開催予定である。現在では、京大、奈良女子大、京都府立大、大阪府立大、大阪教育大、京都工繊大、立命館大、岡山理大などが参加している。この研究会は、単なる学会発表とはことなるゼミ形式をとりいれているため、この分野の大学院生の交流、実験家と理論家の交流など多面的に活発な情報交換がされている。粒子線物理の研究に興味ある方を歓迎いたします。

研究・教育の方法と特徴

研究の最先端を知るためには、国内外の原著論文を読まなければならない。これらの論文紹介を通じて現状を把握するとともに、数学などの基礎力の向上、英文読解力の向上、などをあわせて目指している。また、上記の、フォーラム21「イオンビームを用いた物理とその応用」研究会の世話人のひとりとしてゼミ生や大学院生の交流が深まることも期待している。また、研究室では理論的な研究であるので、実験がどのように行われているかをゼミ生・院生に知ってもらうため、京都大学宇治キャンパスや奈良女子大学理学部などの実験施設の見学勉強会を開催してきた。また、当然のことながら、学会発表や学会参加も行っている。一人ひとりが、自分を磨き、物理学の単純さや多様性、適用性などを幅広い視点から考えることが大切である。単純にいうならば、「物理学の世界に遊び学ぶ《ことであろう。一人一人の個性、人間性を培うとともにいろいろな観点から物を観る柔軟な思考ができること、無生物に限らず人間を含む自然を愛する気持ちを大切にすることがとりわけ重要である気がしている。

また、共同研究先として、実験を行っている(独)日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所、筑波大学数理物質研究科、奈良女子大学物理科学科、京都大学QSECの関係者の皆様に感謝いたします。

注意:最新の研究論文および学会発表などの情報は、岡山理科大学のホームページにある「教員検索システム」によって知ることができます。

最近の研究論文

  1. T. Kaneko, K. Ihara, M Kohno, “Electronic stopping for swift carbon cluster ions connected with average charge reduction”  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B 315 (2013) 76-80.
  2. A. Chiba, Y. Saitoh, K. Narumi, K. Yamada, T. Kaneko, “Quantitative evaluation of charge-reduction effect in cluster constituent ions passing through a foil”  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B 315 (2013) 81-84.
  3. H. Ogawa, K. Sorai, S. Amano, K. Ishii, T. Kaneko, “Secondary electron emission from a thin carbon foil induced by H+, He2+ and  Li3+ at fixed velocity of 1 MeV/u”  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B 315 (2013) 291-294.
  4. T. Kaneko, “Sublinear and superlinear dependences of average charge energy loss per ion on particle number for MeV/atom linear-chained carbon-cluster ions traversing a carbon foil”   Phys. Rev. A 86, 012901 (2012).
  5. H. Ogawa, A. Shimada, M. Kiuchi, M. Hagihara, K. Ishii and T. Kaneko, “Correlated forward-backward electron emission from a thin carbon foil induced by frozen-charged and charge-changed hydrogen penetration”     J. Phys. B 45 (2012) 095201.
  6. A. Ogata, T. Kondoh, K. Norizawa, J. Yang, Y. Yoshida, S. Kashiwagi, T. Kaneko, “Collective energy loss of attosecond electron bunches”,  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. A 637 (2011) S95-S98.
  7. H. Ogawa, A. Shimada, Y. Inoue, K. Ishii, T. Kaneko, “Secondary electron emission from a thin carbon foil induced by equi-velocity protons and electrons of 0.5-3.5 MeV/u”,  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B 269 (2011)968-971.
  8. A. Chiba, Y. Saitoh, K. Narumi, Y. Takahashi, K. Yamada, T. Kaneko, “Measurement of divergence angles classified by charge-state combination of C2+ constituents passing through a thin carbon foil”,  Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B 269 (2011) 824-828.
  9. H. Ogawa, A. Shimada, M. Kiuchi, M. Hagihara, K. Ishii, T. Kaneko, “Role of loss electrons on forward-backward correlation in electron emission from a thin carbon foil by hydrogen irradiation”, J. Phys. B 44 (2011) 165206.   
  10. S. Tomita, M. Murakami, N. Sakamoto, S. Ishii, K. Sasa, T. Kaneko, H. Kudo, “Reduction in the energy loss of 0.5-MeV-per-atom carbon-cluster ions in thin carbon foils”, Phys. Rev. A 82, 044901 (2010).
  11. H. Ogawa, A. Shimada, M. Kiuchi, M. Hagihara, Y. Inoue, K. Ishii, T. Kaneko, “Forward-backward correlation and its incident energy dependence in secondary electron emission from a thin carbon foil upon proton penetration”, Phys. Rev. A 82, 012902 (2010). 
  12. T. Kaneko and S. Ikegami, “Average charge of MeV/atom carbon cluster ions impacted on foils”
    Nucl. Instr. Meth. in Phys. Res. B (2007) (in print)
  13. Seiji Ikegami and Toshiaki Kaneko, “Multiple scattering in solids based on statistical model”
    Bull. Okayama Univ. of Science 42 A (2007) (in print)
  14. T. Kaneko, H. Kudo, S. Tomita, and R. Uchiyama, ”Secondary electron emission from graphite induced by MeV/atom carbon cluster impacts” J. Phys.Soc.Jpn. 75, 034717 (2006).
  15. S. Tomita, S. Yoda, R. Uchiyama, S. Ishii, K. Sasa, T. Kaneko and H. Kudo, “Nonadditivity of convoy- and secondary-electron yields in the forward-electron emission from thin carbonfoils under irradiation of fast carbon-cluster ions” Phys. Rev. A 73, 060901(R) (2006).
  16. H. Kudo, W. Iwazaki, R. Uchiyama, S. Tomita, K. Shima, K. Sasa, S. Ishii, K. Narumi, H. Naramoto, Y. Saitoh, S. Yamamoto, and T. Kaneko, “Energy spectra of electrons induced by MeV atom clusters” Jpn. J. Appl. Phys. 45, L565 (2006).
  17. Takao Wada and Toshiaki Kaneko, “The theoretical study of multiple ionization of C60 fullerence by fast proton impact” J. Phys. Soc. Jpn. 74, 918 (2005).
  18. Takao Wada and Toshiaki Kaneko, “The molecular effect in the multiple ionization of diatom molecules by fast ion impact” J. Phys. Soc. Jpn. 74, 568 (2005).
  19. 金子敏明,「高速クラスターイオン衝突における電子励起の理論《 JAERI-Review 2003, 36 (2004).
  20. 金子敏明,「複数原子イオンによる電子励起とその効果《 JAERI-conf 2003-17, 145 (2003).
  21. Toshiaki Kaneko, “Theory of average charge and energy loss of cluster ions in foils” Phys. Rev. A 66, 052901 (2002).
  22. T. Wada and T. Kaneko, “Multiple ionization cross sections of atoms by swift ions in the Independent electron model” Bull. Okayama Univ. of Science 38 A, 41 (2002).
  23. T. Wada and T. Kaneko, “Stopping power of molecular target by local density approximation” Bull. Okayama Univ. of Science 36 A, 55 (2001).
  24. 金子敏明,物理学演習one point「運動量保存と‘非保存’《(共立出版,1999年)
  25. 物理学辞典(培風館、1984年)(項目執筆)

最近の研究発表(題目、発表者吊、題目、学会吊、日時、開催地の順)

  1. 田中涼、宮原冬比等、金子敏明、小川英巳、「高速2原子クラスターイオン衝撃による炭素薄膜からの前方二次電子放出」《京都大学工学研究科QSEC公開シンポジウム《2014・10.24(金) 京都大学宇治キャンパス
  2. 金子敏明、井原功介、田中涼、宮原冬比等、小川英巳、齋藤勇一、千葉敦也:「単一イオンおよび2原子イオン照射による炭素薄膜からの前方二次電子放出」《第9回高崎量子応用研究シンポジウム《2014・10・9 高崎シティギャラリー
  3. 金子敏明、田中涼、宮原冬比等:「高速2原子クラスターイオン衝撃による炭素薄膜からの前方二次電子放出」《日本物理学会2014年秋季大会《2014・9・7(日) 中部大学春日井キャンパス
  4. 池上誠治、金子敏明:「エネルギー搊失を考慮した小角多重散乱《 フォーラム21「イオンビームを用いた物理とその応用《研究会 2007・1・13(土)  奈良女子大学
  5. Toshiaki Kaneko and Seiji Ikegami:「Energy loss of carbon cluster ion impacted on foil《 16th International Workshop on Inelastic Ion-Surface Collisions(IISC-16) September 17-22, 2006, Schloss Hernstein, A-2560 Hernstein, Austria
  6. 池上誠治、小杉晋也、澤田陽子、金子敏明:「エネルギー搊失を考慮した小角近似での多重散乱《 日本物理学会 2007年春季大会 (講演予定)2007・3・18  鹿児島大学
  7. 池上誠治、金子敏明:「多重散乱における二体ポテンシャルの検討《 フォーラム21「イオンビームを用いた物理とその応用《研究会 2005・12・23(金)  岡山理科大学
  8. 金子敏明:「クラスターイオンによる電子励起と粒子相関《 日本物理学会 2007年春季大会

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更新日: 2014年11月3日

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