久保 徹郎

助教

久保 徹郎

研究課題:核磁気共鳴を用いて希土類化合物における磁性・超伝導の発現機構を解明する

キーワード:磁性,超伝導,f電子,強相関電子系,核磁気共鳴,核四重極共鳴,局所対称性,動的磁性 他

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久保 徹郎

 

研究の背景

 金属間化合物は,構成する元素の種類や含まれる元素の数によって莫大な組成をとり,その組み合わせ次第で多彩な性質を示します.金属はよく知られているように導体であり,銅や金は黄色,アルミニウムや銀は銀白色といった特有の金属光沢を放ちます.身近な金属では,鉄やコバルトを含む物質は強力な磁石となることが知られています.また,アルミニウムや鉛は絶対温度で数ケルビン(K,絶対零度0 Kは‒273.15 °C)の極低温において電気抵抗がゼロの超伝導状態となります. 今から約100年前に水銀が超伝導を示すことが発見されて以来,低温で生じる物理現象は人々の興味を集め続けています.電気伝導や磁性・超伝導といった性質の担い手は全て電子です.硬貨1枚程度の僅かな金属中にも10の23乗個程度の膨大な数の電子が存在しており,その間の量子力学的な相互作用によって多彩な物性が発現します.
 金属や磁性体,半導体は現代のエレクトロニクスや情報技術の発展を支える重要な素材であるためその振る舞いの基本原理を理解することは応用上も極めて重要です.

研究のねらい

 磁性の研究においては,遷移金属やランタノイド・アクチノイドを含む化合物がよく研究されています.これらの元素は特定の軌道状態(遷移金属:d軌道,ランタノイド・アクチノイド:f軌道)に価電子を持ち,d電子やf電子の間には電子間のクーロン相互作用が強く働きます.このような系は強相関電子系と呼ばれ,一電子近似を超えた新奇な物性が現れる舞台となります.
 その中でも,私たちが研究対象としているのはランタノイド化合物の物性です.f軌道にある電子は物質中において局在する傾向が強く,ランタノイド化合物はしばしば強い磁性を持ちます.f電子は磁性を担うだけではなく,周囲にある伝導電子との量子力学的な相互作用(cf混成)によって,低温で風変わりな金属状態や通常の金属の超伝導を記述するBCS理論では説明ができない超伝導状態を示します.これらの現象は数10 K以下の低温で発現するため,圧力,磁場などの外場で相互作用を制御しやすく,現象の背後にある物理を理解するうえで有利です.

目標と戦略

 我々が研究対象とする,ランタノイド化合物が示す磁性や超伝導は低温で生じるため,比較的小さな圧力・磁場などの外場によって現象を制御することが可能です.これは現象の背後にある物理の本質に迫る上で有利な点です.
 私たちは,ランタノイド化合物を対象に核磁気共鳴(NMR)・核四重極共鳴(NQR)分光法を用いた研究を行っています.NMRやNQRでは物質にラジオ波を照射し,電子系と相互作用している原子核からの信号を観測することによって間接的に電子系の情報を得られます.電子系と原子核の相互作用は適度に弱いため,電子系を乱すことなく低温での物理現象を支配する低エネルギーの励起を研究することが可能です.NMRでは物質に磁場を加える必要がありますが,NQRはゼロ磁場での実験が可能であるため相補的に電子系について知ることができます.
 NMRやNQRは特定の種類の原子核周辺の電子状態を選択的に観測できる手法であり,電気抵抗率や比熱・磁化率といったバルク測定手法が物質全体の応答を観測することと相補的なため,ミクロな測定手法と言えます.ミクロ測定の手段にはミューオンスピン回転・中性子散乱なども存在しますが,その利用には大型加速器や原子炉が必要です.そのため,NMRやNQRは研究室規模の設備で物質の電子状態をミクロな観点から調べることが可能な数少ない手法です. 私たちの研究室では,上述したようなミクロな測定手法を用いて,ランタノイド化合物が示す新奇な磁性と超伝導をもたらすcf混成のメカニズムを解明することを目指しています.

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更新日: 2017年5月18日

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