福島第一原発事故に伴う被曝線量に関する解説その2

応用物理学科 教授 豊田 新

福島第一原子力発電所事故から10日ほど経ち、放出された放射性核種による食物や飲料水への汚染が問題になっています。23日現在の報道では、基準値を越える、越えないという議論しかなく、体に取り込むことによってどれだけの被曝を受けるのか、よくわからない方も多いと思いますので、できるだけわかりやすく解説してみました。理解の一助になれば幸いです。

1.外部被曝と内部被曝について

先週まで問題になっていたのは、空気中の放射線量でした。空気中の塵、あるいは建物、道路などに付着した放射性核種から放出される放射線を測定していたものです。これによる人の被曝を「外部被曝」といいます。外部被曝の計算のしかたについては、前回の解説をご覧ください。

これに対して、食物に付着、あるいは含まれていたり、飲料水に含まれていたりする放射性核種を体内に取り込むと、取り込まれた放射性核種から放射線が出て、体が被曝することになります。これを「内部被曝」といいます。外部被曝の場合は、放射線量の低い場所へ移動すれば被曝を避けられますが、内部被曝の場合、一旦取り込んでしまうとそれが排出されるまで被曝が続くことになります。

2.単位について

放射性核種は放射線を出して壊変(別の元素になること)します。ある量の物質中に含まれる放射性核種が1秒間に1回壊変する時、その物質中の放射能は1 Bq(ベクレル)であるといいます。水1 kg中で放射性ヨウ素が1秒当たり210個壊変すれば、その水の放射能は、210 Bq/kg である、ということになります。 では、その水を2.5 kg飲んだとすれば、どれだけ被曝することになるのでしょうか?

3.放射能から被曝線量への換算

便利なことに、その換算係数が知られています。わかりやすいのは、原子力資料情報室のホームページですが セシウム137の場合、その係数は、経口摂取(食べた時)で1.3×10-5 mSv/Bq です。つまり、1Bqのセシウム137を食べると、1.3×10-5 mSv の被曝をする、ということです。

現在問題になっている核種である、ヨウ素131では、経口摂取に対して 2.2×10-5 mSv/Bq です。また、測定が難しいため報告されていないと思われますが、ストロンチウム90という長い半減期の放射性核種があり、2.8×10-5 mSv/Bq となっています。

4.計算例

3月23日に、東京の浄水場の水に、210Bq/kg の放射性ヨウ素が含まれていたと報道されています。1日当たり2.5リットル(kg)飲用すると、

210 Bq/kg×2.5 kg/日×2.2×10-5 mSv/Bq = 0.012 mSv/日

の被曝をすることになります。1年では4.2 mSv となります。自然放射能による被曝はラドンを含めて年間2.4mSvといわれていますので、その倍程度の被曝を余分にすることになります。

ホウレンソウ等についても、どれだけ摂取するかを考えて計算をすれば被曝線量(正しくは預託実効線量)を計算することができます。上記の計算は、その水を毎日1年間飲み続けていた場合ですので、短期間の場合にはその日数で計算をすればよいことになります。

内部被曝の場合には、放射線の確定的な影響(必ず起きる身体的影響)があるとは考えられていません。発がんのリスク(前回の解説を参照)を考慮すべきです。

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